試合の評価 自滅しかけたが勝ち点を拾った。
審判 女子としてはかなり上手い。日本には相性が良かった。
イングランドは私が想像していたよりはるかに強いチームだった。試合後の監督のコメントとは裏腹に、内容は完全に負け試合。相手に与えた決定機は数知れず、イングランドのシュートミスがなければ大敗を喫していてもおかしくないゲームだった。一方、日本はセットプレー以外に決定機と呼べる場面はなく、よく2点も取ったとさえ言える。前半は特に日本の右サイドを破られるシーンが目立った。日本のDFはスピードが無い訳ではないが、5-10メートルならともかく、長い距離をよーいドンで競争になるとどうしても振り切られてしまう。陸上でも日本は女子マラソンは強いがトラック競技では勝負にならないのと同じだ。フィジカル的にはこの差は埋めようがないので、縦のドリブルコースを切るなど、なんとかする守り方が必要になる。しかし、現状ではそう言う守り方は出来ていない。縦のドリブル突破に弱いのは男子のフル代表を含め、各年代の代表が露呈している弱点でもある。日本サッカー全体の課題といえるだろう。
さて、前半終了時の日本には、残念ながら私が交替を考えたい選手が3人も居た。大野、宮本、近賀の3人である。大野は殆ど前線でボールの受け手として機能していなかった。そのため、荒川への負担が大きくなり、必要以上に荒川を消耗させることになってしまった。宮本はパス回しが不安定で、自陣での危険なパスが多かった。また、近賀はあれだけ自分の守備エリアを突破されては交替を考えざるを得ない。実際、近賀と宮本が後半に交替になっていることを考えると大橋監督も同じ見方だったのかも知れない。もし、磯崎の足がつらなければ大野も交替になっていたかも知れないのだ。私が指摘したいのはこの3人の内、大野と宮本は直近の試合で調子を落としていたように見えたことだ。他のオプションがいくらでもある中でこの2人を先発で使う判断は間違っていなかったのか。確かに、前日に試合会場での練習が出来ず、ピッチコンディションを確認できなかったのは気の毒だし、日本には不向きなピッチであることも確かだ。ただ、私には大橋監督がかつてのジーコのような、選手に優先順位をつけて調子やコンディションが悪くても起用するタイプに監督のように思えるのだ。もっと柔軟な選手起用が出来なければただでさえフィジカルで他チームに劣る日本がグループを突破することなどできないだろう。
試合は終了間際に宮間の劇的なFKで追いついて引き分けた訳だが、問題にしたい点がもう一つある。日本の2点目の失点シーンである。それは、日本の自陣深くで得たスローインで、投げ入れたボールを宮間が奪われてスミスの独走を許してしまったものだ。宮間は試合後に自分のミスだと言っていたが、これは宮間のせいではなく監督の責任だと思う。現代サッカーではマイボールのスローインでボールをキープするのは簡単ではない。対戦相手から見れば、日本のスローインはボールを奪うチャンスなのだ。そう言う観点からすると、自陣深くの日本ボールのスローインはピンチであるという認識を持たなければならない。監督としてはそのような場面で出来る限りリスクを軽減させるような再開方法を指示するのが当然だろう。だが、大橋監督がそういう指示をしていたとは思えない。日本は普通にボールを投げ入れ、宮間がトラップしたボールをスミスに前に出ながらカットされるという日本から見れば考えられうる最悪の形でボールを、そしてゴールを失ってしまったのである。
Jリーグでは自陣深くでのマイボールのスローインは殆どの場合、そのチームでポストプレーを担当するFWが下がって来てヘディングでボールを後ろへ流すようなプレーをするのが一般的である。そうすることで、仮に相手にボールを奪われてもカウンターを受ける危険は回避できるし、相手がヘディングでボールを外に出せば、より危険の少ない地点から再度スローインで再開できる。日本が失点した場面では荒川が下がって来てボールを受けなければいけなかったのだ。こんな基本的なことを大橋監督が知らないはずはないだろう。だとすれば、それをチームに徹底できなかったのは非常に残念である。
この試合の結果を見れば、日本のグループ突破はかなり厳しくなったと言わざるを得ない。私がイングランド組し易しと見ていたのは全く根拠のない誤った先入観であった。ただ、イングランドが日本より格上と考えれば、逆に僅かながら突破の可能性が出て来たようにも思える。ただ、このグループには悲しいかな日本には厳しい二つの前提がある。
前提その一 日本はドイツから勝ち点を取れない。
前提その二 イングランドはアルゼンチンに勝つ。
まず、一については日本がドイツに勝つことはおろか、引き分ける可能性も殆ど無いと言っても過言ではないだろう。ドイツのパワー、スピード、テクニックはイングランドの更に一段上を行く。普通に戦えば日本が5、6点差で敗れてもおかしくない相手だ。次にその二について。ドイツに0-11で負けたのを見ても分かる通り、アルゼンチンはこのグループでは力が落ちる。何しろ日本が前回大会では6-0で大勝した相手なのだ。ドイツ戦のスコアを見る限り、アルゼンチンは4年前からそれほど進歩していないと思われる。となるとイングランドはアルゼンチンに勝つだろう。そしておそらく日本も。となると、イングランドが次戦でドイツに引き分けてしまうと日本にチャンスはない。なので、ここからはドイツが順当にイングランドに勝ってくれると仮定して話を進める。
日本がグループを突破するためにはイングランドと勝ち点で並び、得失点差で上回らなければならない。日本に不利なのは体格に勝るイングランドの方が対ドイツの失点を少なく抑えやすいという点だ。なので、日本はアルゼンチンに対してはできるだけ点を取って勝たなければならない。そのためには大野は外して沢を前線に上げた方が良いと思う。大野はトラップに難があり(逆に言えばトラップが上手ければ凄い選手なのだが)、またゴール前での落ち着きに欠ける。先日のタイ戦でも、焦って絶好の得点機を逃すことが多かった。ピッチコンディションも大野には相性が悪い。沢は以前ほどの得点力はないが、経験はあるし頼りになる。大野の代わりに中盤に入れる選手は、柳田でも原でも安藤でも人材は豊富だ。ドイツが連勝すれば日本戦は主力を温存してくるかも知れないのは好材料。中2日しかないのでイングランドが日本戦の痛恨の失点のショックを引きずってくれる可能性もある。が、それでもドイツ戦は苦戦は免れない。アルゼンチン戦で1点でも多く取ってイングランドにプレッシャーをかけたいところだ。

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